お知らせ・日々の記録

MOKスクール 兵庫播磨ツアー

// 2026.Jan.19

MOKスクール 兵庫播磨ツアー

// 2026.Jan.19

小泉です。MOKスクールの林産地ツアー(’25年 11 / 8 ~9 )のご報告です。

前回は和歌山の紀州材の産地を訪ねましたが、今回は兵庫県・播磨地方、なかでも宍粟市周辺を中心に巡ってきました。

私が理事を務めるMOKスクールでは毎年、木の産地を訪ね歩くツアーを企画しています。

料理のシェフが自ら産地へと足を運び、食材の背景を知ったうえで料理を組み立てるように、建築に携わる私たちもまた、素材を深く理解することが不可欠だと感じています。

今回のツアーでは、宍粟における林業の実態、木材エネルギー利用の最前線、地域企業と山の関係、そして産地が抱える課題と可能性を、多角的に知ることができました。


初日に訪問した場所は以下の通りです。

■ 山田林業さんの山/間伐作業

■ 生野銀山バイオマス発電(株)/バイオマス発電

■ しそうの森の木/製材工場・プレカット工場


■ 山田林業さんの山(間伐作業の現場)

初日は、山田林業さんが管理されている山からスタートしました。

ちょうど間伐作業の最中という貴重なタイミングで、樹齢50年ほどの杉の伐採を間近で見学します。

倒木の瞬間はとても迫力があり、一本の木が育ってきた時間と、それを使わせてもらう側の責任を強く意識させられました。

木を「材料」としてだけではなく、「命の延長として使う」ことの重みを、身体で感じる時間でした。

伐採の様子の動画。※音が出ます 
1:40あたりから倒れ始めます。


■ 生野銀山バイオマス発電(株)

次に訪れたのは、生野銀山バイオマス発電所

林業とエネルギーが直結する現場です。

木材チップをガス化して発電し、発生する排熱をチップ乾燥に再利用することで、高いエネルギー効率を実現しています。

12気筒エンジン6基で900kWを発電し、一般家庭約1100世帯分に相当する電力を、毎日22トンの木材チップで賄っています。

さらに印象的だったのは、副産物として生成される「バイオ炭」です。

農業用土壌改良材として活用され、J-クレジットの創出にもつながるなど、木材を多層的に価値化する仕組みが構築されていました。


■ しそうの森の木(製材工場・プレカット工場)

初日の最後は、「しそうの森の木」の製材工場・プレカット工場を見学しました。

一般的な製材所では丸太は横向きに置かれますが、ここでは縦向きに配置されています。

木口を確認しながら扱うことで、材の状態を的確に見極めることができ、 すべての丸太を合理的に、かつ個性を活かして使い切ろうとする、しそうの森の木さんの姿勢が端的に表れていました。

大径材加工棟では、丸太が柱や梁へと加工されていきます。

ここでは、大径木を活かす製材方法として「上下芯去り」について詳しく説明していただきました。

一般的な「左右芯去り」と比べ、構造材として非常に使いやすそうだと感じます。

木材の応力の方向と梁としての使い方。 下面となる「腹」は節が少なく美しく、側面も柾目に仕上がる。

大径木活用における、一つの答えではないでしょうか。

切り出された材は乾燥工程へと進みます。

一般的な中温蒸気式乾燥に加え、メーカーと共同開発した真空乾燥機※を用い、高品質な建材の安定供給を実現しています。

※真空ポンプで装置内を減圧し、水の沸点を下げることで低温でも水分を蒸発させ、加熱と減圧を組み合わせることで、材内外の圧力差を利用して内部の水分を効率的に外部へ引き出す仕組みです。これにより、温度を上げ過ぎることなく乾燥させることができ、木材が痛むことを最小限に抑えます。

(右の白いものが一般的な「中温蒸気式乾燥機」左の銀色のものが「真空乾燥機」)

最後にプレカット工場を見学。

機械加工が中心となる一方で、機械では対応できない仕口・ほぞは、人の手で丁寧に仕上げられていました。

また、長い時間をかけて取得したJAS認定材についても説明を受けました。

木という不均質な素材を数値で保証する難しさと、それでも認定を取得する意義が、木造建築の裾野を広げているのだと感じました。

夜には懇親会を行い、翌日は朝から座談会です。


■ 朝の座談会

翌朝7時半から座談会を実施。 行政、林業、製材、設計、工務店というそれぞれの立場から議論が交わされました。

行政からは、木材利用は「切って、使って、植えて、育てる」資源循環型林業を支える根幹政策であるという説明。

林業側からは、補助金に依存せず、A材からC材までを安定供給するための技術力と事業戦略の重要性が語られました。

川下の立場からは、非住宅建築の木造化・木質化にこそ今後の可能性があるという指摘。

設計者からは、新築偏重を改め、既存建物の長寿命化や公共建築への木材利用を進めるべきだという提言がなされました。

単なる売上拡大ではない「成長」の捉え直しと、 補助金に頼らない自立した産業構造の必要性が、共通認識として共有された時間でした。


そして座談会の後、2日目の日程は以下のように巡りました。

■ 揖保乃糸資料館 そうめんの里

■ (株)山弘 龍野展示場 見学

■ マチヤーケード見学

■ 城下町龍野散策/武家屋敷など

地域の産業や文化を巡ることで、宍粟という産地のもつ特色や意味合いを、より奥深く学ぶことができました。

総移動距離は、2日間合わせて240km。ハードでありながら、非常に濃密なツアーとなりました。

情報化社会の現代においてこそ、 現地へ赴き、自らの目で見て感じることの大切さを、改めて強く実感しています。

そして、今年2026年のMOKスクールのカリキュラムやツアー内容も、少しずつ形になりつつあります。

近々、あらためてご報告いたします。


Koizumi

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