2016年に新築設計のご依頼をいただいた【松阪のバイクガレージハウス】の住まい手さんより「隣接する築古の旧母屋を息子夫婦が暮らす住まいへ改装したい」とご相談をいただきました。
二度目のご依頼を頂けるのは、過去の仕事を評価を頂いたという意味でたいへん嬉しくもありますが、さらに期待を超えていくためにも、身が引き締まる仕事となりました。
1階部分の1/3程度の限定的な改修ではありましたが、ご予算配分を工夫しながら出来るかぎり快適性を向上させるよう検証しました。
旧民家を改装する上で、プランニング以前に基礎となる「構造・断熱/気密に関すること」の情報を整理したうえで、暮らしの動線計画を見直しました。
元は南の縁側を持つ8・6・6・4.5畳の田の字プランでしたが、縁側・中廊下をリビングに取り込み「移動のためだけの空間」を無くした平面計画へ改修しています。
断熱材がほぼ無いような状態でしたので、床・壁・天井断熱については断熱ラインが途切れないように留意し、気密テープ・気流止め等で気密性能も共に高めることを重点的に行いました。構造は2階に掛かる梁と壁位置とのバランスを踏まえ、プランニングと絡めつつ最適化しています。
ご予算の都合上、傷みの少ない外装は次のタイミングに回すこととし、住まいの顔となる玄関廻りのみ外部建具の更新を行いました。
シングルガラスの既存サッシは流用し、内側に新設サッシを設け2重サッシとしています。
内装については、母屋時代の思い出を引き継げるように欅の大黒柱と彫刻欄間を再利用し、ささやかな間接照明でライトアップしました。仕上げについては、できるだけ素材感のあるものを安価に使うため、通常は下地材となる少しグレーがかった石膏プラスターを鏝押えでそのまま仕上げとし、ラワン合板も建具や家具に全面的に活用しています。
工業製品ではありますが、母屋の佇まいに違和感なく馴染むよう、手の跡や自然材料のニュアンスが残るように配慮しました。
親子2代の思い出と時をつなぐリノベーションとして新しくなった母屋は、子世帯の離れとなりました。
10年前に建った母屋と合わせて、孫世代までも永く愛される住まいとなることを祈っています。
所在地:三重県松阪市
工事種別:木造家屋改修
用途:住宅
構造・規模:木造軸組工法/2階建て
面積:70.10㎡/21.2坪
竣工:2024.12
設計:SWING/金山大,熊澤花絵
施工:株式会社エラ・プラン