天王寺から東へ1キロとすこし、国道に面した東向きマンションのリノベーションです。
周囲は同様のマンションが多く建ち並び、日照も限られた環境にある築23年の都市型住宅。終の棲家として20年程度はゆったり落ち着ける環境で過ごされたいというご要望から計画がはじまりました。
25坪/3LDKの標準型間取りに親子3人の暮らしが内包された現お住まいは、収納の少なさ・リビングのゆとりの無さ・廊下が暗い・窓面の結露や冷え、といったお悩みを抱えられていました。
ご要望・ご予算を熟考した結果、コストバランスを踏まえた改修案として、水回り位置はほぼ変えずにリビングを可能な限り広く確保すること、各居室ごとの適正サイズと収納量のベストバランスを検証しました。ご夫婦2人の暮らしへとライフスタイルが変わることもあって、小さな寝室二つと大きなファミリークロゼットをもつ2LDKへ間取りを変更しました。
午前中の日照が望めるバルコニー側にあった和室は壁を持たない畳コーナーとし、窓からの光をリビングへ効果的に届けるようにしました。床下収納付きの畳コーナーはコストの制約上既製品を用いましたが、見え掛かりには米栂の框材や松の突板で化粧し、ケミカルな下地を覆い隠して質感を向上させています。
壁をなくしたことで視覚上の広がりを確保し、2面開口から入る陽光を柔らかく照らす磨いた砂漆喰の壁・天井の素材感、赤身の木目が美しい東濃杉の床など、自然由来の豊かな質感を楽しめるリビングに仕立てました。
妻面となる南側はガラスブロックを配置した出窓形状となっており、そのクランクした形状に沿わせて造作ベンチを配置し、あたたかい窓辺の読書コーナーとして設えました。
静けさと温かさを向上させる二重サッシや、肌に柔らかな触感の杉板や水回りの炭化コルク床、ビロードのような手触りの漆喰壁など、身体への心地よさや静かな幸福感をまとう住まいを目指しました。
最後に、お引渡し後に届いたクライアントからのうれしいメッセージをご紹介しておきます。
「床の踏み心地の良さや照明、二重窓にしたことで静けさも確保されました。何よりも窓際のベンチは夫婦のお気に入りの場所です。今は寝る前の少しの時間にお香を焚きながら、ゆっくりとお茶をいただくのが何よりの癒しになっています!家に根が生えそうです^^」
A様、大切なご夫婦お二人の終の棲家を任せていただきましてありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
所在地:大阪市阿倍野区
工事種別:マンションリノベーション
用途:住宅
延床面積:83.09㎡/25.13坪
竣工 : 2022.09
設計:SWING/金山大, 熊澤花絵
施工:インフィニティ株式会社
突板:安多化粧合板
写真:平井美行
照明計画:大光電機株式会社