古くから海水浴場として賑わう京都の海岸沿いで、別荘の計画をご相談いただいたのは、まだコロナ禍が続いていた2022年初頭のことでした。クライアントは代々この地に別宅を構えてこられましたが、老朽化を機に建て替えをご希望されました。
敷地は、北側に国定公園の松林越しに海岸を望み、南側には山並みを仰ぐことができる、自然に恵まれた環境です。その立地を最大限に生かすため、最も長く過ごすリビングを2階に配置しました。海を一望できるだけでなく、視線を南に移せば山の稜線が見えるよう、屋根の一部を跳ね上げて抜けを確保。この構成が外観を特徴づけるファサードデザインとなっています。
1階にもLDKを設け、大人数でのパーティーや臨時の飲食利用にも対応できるよう、設備を充実させました。また、海岸へ続く門までの前庭には余白を持たせ、バーベキューコーナーを計画しています。
外部空間、1階、2階、それぞれに余暇を楽しめる場を備えた別荘となりました。さらに性能面では、耐震等級3相当、気密性能を示すC値は0.3を確保しています。
構造材には兵庫県産材を使用。低温乾燥による品質管理に定評があり、これまでのプロジェクトでも信頼関係を築いてきた「おぎもく」さんに依頼しました。木配り(どの木材をどの場所に用いるかを選定する作業)は私たち自身で行い、同じ材料であってもより美しく見えるよう、配置を吟味しています。
そして2階全体を覆う天井には、そうして選定された丹波産の杉材が現しで使用されています。海側に向かって高さを抑えた天井が、眺望を際立たせつつ、落ち着きのある空間をつくり出しています。
所在地:京都府宮津市
工事種別:新築 / 木造2階建
用途:別荘
延床面積:302.29㎡/91.44坪
竣工 : 2024.6
設計:SWING/小泉宙生, 姉崎隆介
構造設計:下山建築設計室/下山聡
照明計画:アカリ・アンド・デザイン/吉野弘恵
施工:株式会社大滝工務店
丹波材製材所:株式会社おぎもく
写真:冨田英次