ここ数年、働く場であるオフィスの設計に関わる機会が増えました。
ご依頼いただく先も、リーシングを専門にされているところ、シェアスペースをプロデュースされているところ、いち企業の社長さん、ビル一棟のオーナーさん、など一口に「オフィスを設計する」といっても様々な入口、様々な出口、様々な人間模様があります。
ご依頼先の「お困りごと」によって、出来上がるオフィスの形が変わってしまうと言えますネ。
先日、リーシングを専門にされているクライアントと、長引くコロナ禍におけるオフィス需要の変化についてお話しする機会があり、雑感をまとめたいと思いました。
いうまでもなく、2020年はコロナによって働き方や暮らし方など、皆さん一様にこれまでにない大きな変化を余儀なくされました。働き方で言うと、テレワークやオンライン打合が一気に広まり、全国一斉に働き方の社会実験を行った年だったとも言えます。
2021年においても長引くコロナ禍でこの流れは止まらず、働き方についてはこれまでの「集約・集中」から「分散・可変」へ、マインドチェンジが完了したのではと感じています。大企業をはじめ危機管理に敏感な企業では、継続してテレワークが推奨されていますし、出社できない社員さんたちがコワーキングスペースの利用を加速化されているという状況が起こっています。
企業側が、これまでのように社員数に応じて「一人当たり約3坪」という基準でオフィスを必要としなくなり、床需要についてのマインドチェンジも起こってきているようです。ポジティブな意味での縮小移転が増え、シェアオフィスを借りられる企業も多くなり、時代のニーズに応える形でシェアオフィスも益々増えてきているようです。
僕たちがこれまで携わった中に「ビル全体の価値向上」を目的として共用部のコワーキングスペース化をおこなった事例があります。
「コモンルーム梅田」
ビルオーナーからは、時代のニーズに合わせて将来的にはビル一棟をまるごとシェアオフィス化するため、まずは中心となる共用空間(コワーキングスペース)を作ってほしいというご相談を頂きました。コワーキング利用を充実させてビルの活性化を進めた後、既存の貸室を契約ハードルの低いシェアオフィスへと少しずつリニューアルしていくという素敵な構想でした。
場当たり的に見栄えを綺麗にするのはある意味ごまかしとしてのデザインで、永続的に価値を持たせるために、当ビルオーナーには建物にとっての幸せな使われ方や、活性化へのヴィジョンが見えているように思えました。
このプロジェクトはコロナ禍前の2019年のお仕事でしたが、時代の要請から先廻りしたプロジェクトだったとも言えます。既存貸室もこれからシェアオフィス化していく際には、家具や内装を予め用意してあるセットアップオフィスとするなど、これからも色々な方向性が考えられそうです。
ニューノーマル時代となり都市の価値は少しずつ変化しますが「人と人が出会う場」という建築や空間の本来の価値は何も損なわれないと思います。「集約・集中・固定」から「分散・可変・選択」へとニーズが少し変わるだけかなと。そのニーズに身軽に反応できる、どんな変化にも対応できるおおらかな空間が、これからの働く場に求められる新しい価値の場なのではと思います。
エリア全体の活性化、ひいては街全体の活性化のためにも、ビルにできることはまだまだ沢山あります。ビルのリニューアルでお困りごとがありましたら、お声がけください。問題解決のため共に進んでいきましょう。
Kanayama